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天宮さんの冷たい手を握りながら、人の間を縫うように歩く。
少し後ろを見ると、手を繋がれても大人しくついてくる、天宮さんの姿がある。
ご主人様に叱られた犬のように、ションボリした顔で、トボトボと歩いていた。
正月早々、坂本なんかに会うなんて最悪だ。
それに、天宮さんを落ち込ませたから、なお最悪。
でも、天宮さんも天宮さんだ。
天宮さんが忽然(コツゼン)と姿を消したとき、本当に生きた心地がしなかった。
見つからなかったらどうしよう。
拐われたんじゃないかって思ったら、不安でたまらなかった。
で、必死で探して見つけたと思ったら、坂本龍馬と楽しそうに話してるんだ。
僕のこの時の気持ちが分かる?
安心したと同時に、かなりムカッとした。
……心が狭いと思う。
でも、それだけ君のことが心配だったんだ。
だから僕はあの時、君にお仕置きしてしまった。
でも、天宮さんは女の子だ。それに、坂本が言うには身体も弱いらしい。
やっぱり、いくらお仕置きだとしても、顔の鷲掴みはやり過ぎたな。


