師匠は分かっているんだ。
私が龍馬さんの傍にいたいと思っていることに。
それでも……やっぱり私は師匠が大切だ。
師匠の未来を変えてあげたい。
「私は師匠の未来を変えます……。師匠は私にとってかけがえのない人なんです。だから諦めません……」
俯きながらギュッと袴を握りしめると、師匠はフッと笑った。
『……ありがとう、蒼蝶。こんなに想われて僕は本当に幸せ者だよ。でもね、蒼蝶が僕を想ってくれているのと同じぐらい僕も蒼蝶のことを想ってる。
だから幸せになってほしいんだ』
師匠の言葉を聞きながら、徐々に意識が遠くなるのを感じた。
眠気が全身を包み込み始める。師匠の声が遠くなる。
『蒼蝶が安心してその人の傍にいられるように、おまじないをかけてあげるね』
「おまじ、ない……ですか?」
おまじないって何だろう……。そう思って、師匠に聞こうとしても口が重くて動かない。
『蒼蝶、さようなら』
その言葉を最後に、私は完全に意識を失った。


