私の師匠は沖田総司です【下】


沢山泣いて、気分が少し落ち着くのを感じた。

すると師匠が抱きしめていた腕を緩め、代わりに私の頭を撫でた。

『蒼蝶』

「はい」

『もう、僕の未来を変えなくていいよ』

「え!?」

師匠の言葉が信じられなくて、私は身体を離して師匠を見た。

「何でそんなこと言うんですか!?師匠は成仏したくないんですか!?」

『成仏はしたいよ。でも、それ以上に蒼蝶には無理をしてほしくない』

「ダメです、絶対にダメです!私なら大丈夫ですから……!」

私はいや、いやと小さな子供のように首を横に振った。

また涙が零れた。

師匠に諦めて欲しくなくて、泣きながら何度も「私は大丈夫」と言った。

でも、師匠は何も言わず、私に向かって微笑むだけだった。どこか諦めと寂しさを含んだ微笑み。

『蒼蝶』

師匠は両手で私の顔を挟むと額を合せてきた。

『もう十分だよ。残りの時間は自分のために使って。本当に傍にいたいと思う相手と一緒にいるんだ』

「そんな人、いません……」

『本当に?』

何も言えなくなった。

なぜなら頭に龍馬さんの姿が浮かび上がったから。