沢山泣いて、気分が少し落ち着くのを感じた。
すると師匠が抱きしめていた腕を緩め、代わりに私の頭を撫でた。
『蒼蝶』
「はい」
『もう、僕の未来を変えなくていいよ』
「え!?」
師匠の言葉が信じられなくて、私は身体を離して師匠を見た。
「何でそんなこと言うんですか!?師匠は成仏したくないんですか!?」
『成仏はしたいよ。でも、それ以上に蒼蝶には無理をしてほしくない』
「ダメです、絶対にダメです!私なら大丈夫ですから……!」
私はいや、いやと小さな子供のように首を横に振った。
また涙が零れた。
師匠に諦めて欲しくなくて、泣きながら何度も「私は大丈夫」と言った。
でも、師匠は何も言わず、私に向かって微笑むだけだった。どこか諦めと寂しさを含んだ微笑み。
『蒼蝶』
師匠は両手で私の顔を挟むと額を合せてきた。
『もう十分だよ。残りの時間は自分のために使って。本当に傍にいたいと思う相手と一緒にいるんだ』
「そんな人、いません……」
『本当に?』
何も言えなくなった。
なぜなら頭に龍馬さんの姿が浮かび上がったから。


