私の師匠は沖田総司です【下】


分からない……?

小刀を持っていながら自分で斬ったことが分からないのは、普通ありえないことだ。

副長は天宮が言い逃れするために嘘をついたんだろうと言っていたが、天宮がそんな安っぽい嘘をつくのか?

「そういえば……」

以前にも似たようなことがあったな。

確か、天宮が初めて人を斬ったときの夜。

俺は天宮にその日の夜のことを覚えているか聞いたことがあった。

そのとき天宮はよく覚えていないと言った。

人を一人斬ったのは覚えているが、そのあとのことは全く覚えていないと。

天宮が覚えていなかったのはおそらく、二つ目の人格である蒼夜叉が主人格になっていたからだ。

蒼夜叉が表にでていたなら、天宮の言葉の意味が分かる。

……そうなると、なぜ蒼夜叉が出てきたんだ?

おそらく蒼夜叉は天宮を守るために存在している。

蒼夜叉がでてきたのは、天宮の身に危険が迫ったからだ。