ゆっくりと頷き 私は振り返ることなく進んだ。 大好きだった兄は、 まだそこにいた。 とっくに不幸の塊に飲み込まれていると思っていた。 でも兄は必死に戦っていた。 こうして私を逃がしてくれた。 心の中で何度もお礼を言う。 でも、誠の名を隠し 変装した自分でこれから生きていかなくてはいけない。 いつ捕まってもおかしくない。 化け物の自分が怖い。