胡海side

二年生に進学して、どことなく浮ついてくる春。同級生のスカートが短くなっていたり、ネクタイを緩めていたり。そんな中俺の服装は相変わらずだ。上までしまったYシャツにブレザーを着て、まるで新入生みたいだ。生徒たちは暗いなという目線を送ってくる。それでいい。誰も俺に構わず、通り過ぎてくれればいい。

「ちょっと!そこの人!!」

後ろで女子生徒が何か叫んでいる。こんな大きな声で叫ばれたら恥ずかしいだろうな。そんなことを思いながら教室に向かって歩く。

「いてっ」

後頭部に何かが当たった。すごい痛かったんだけど。恐る恐る後ろを振り返ると、落ちているスクバ。そして、凄い血相で睨んでくる女子生徒。え?俺なんかした?女子生徒がズカズカと近づいてきて一言。 

「それ私の上靴」

え?上靴?そんなわけ…だって大川って名前が書いてあるし。

「いや、でも名前…」

「私も大川なの!大川夜空!」

うわ、まじで。ふつうに間違えた。焦って顔を上げると下を向いて震えている。そうだよね、こんな地味でキモいやつに上靴なんか履かれたもんなら怒るよね。

「あなた私と靴のサイズ一緒なの!?!?」

え、そこ……?