私の学校にはいくつか怪談がある。


自分の頭部をドリブルするバスケットボール部員の幽霊、上がってしまったら戻ってこられない階段など。


だけど、どれも作り話みたいで誰も本気にしていなかった。


そんな怪談の中に一つ、やけに内容が詳しいものがあった。


それが……「赤い人」の怪談。


数ある怪談の中で、どうしてこれだけが詳しく語られているのか、どうしてほとんどの生徒が知っているのか、私は知らなかった。


そう、本当にこれに巻き込まれるまでは。









「あれ?スマホがない。ポケットに入ってるはずなのに……」


放課後、掃除が終わって下校しようとしていた私は、どこを探してもスマホがない事に気付いた。


「里奈?何してんのよ。ほら、早く帰るよ」


友達の優香が教室の入り口で私を呼んでいるけど、スマホがないのに帰る事なんて出来ないよ。


あれがなかったら生きていけない!


「優香も一緒に探してよ、スマホがないの!」


「マジ?どこに落としたのよ」


ハアッと溜め息をついて、仕方ないなと言わんばかりに一緒に探してくれる優香。


だけど、カバンやポケットの中はもちろん、ゴミ箱や机の中にも私のスマホはなかったのだ 。


「もしかしてさ、音楽室じゃないの?里奈さ、授業中に弄ってなかった?」