3つ星物語

「ど、どうしましょうか、ねぇ」
 
だけど、今、私は南生なのだ。
 
スローペースに、マイペースに時間を進めなければいけない。

「ドーナツでも食べに行こうか」

「いいわねぇ」
 
玖生(ワタシ)は甘いものは苦手なのだ。それでも、伊津くんに合わせなきゃいけない。
 
南生だと知られないように、彼女に扮する。

「この間の、南生ちゃんの焼いたスコーン、とっても美味しかったよ」

「あらぁ、直哉くんのためを思って焼いたものだもの」
 
私の言葉に、伊津くんはにこぉ……ととろけるような笑みを向ける。
 
とても素敵な笑顔だった。ベビースマイルとでも言うのだろうか、無垢で人懐こい笑顔だ。女の子だったら誰でもイチコロだ。
 
だけど、あれ? 私の胸はうんともきゅんとも鳴らなかった。
 
伊津くんは私の手をそっと握った。