3つ星物語

「あらっ、ダメよ。南生。ため息は幸せが逃げていくのよ」 
 
そう言って彼女は私の口を手で塞いだ。

「そうね」
 
私がふがふがと頷くと、実沙ちゃんは口から手を離した。

「何があったの? 喧嘩でもした?」

「まあ……」

「夫婦喧嘩は犬も食わないって云うしねぇ」
 
夫婦喧嘩……私たちはまだ夫婦ではない。今すぐにでもなりたいのに。
 
私は机の上に置いた鞄から教科書やノート類を出し、机の中に入れた。
 
そして話題を変えた。

「実沙ちゃんは、何歳で結婚したい?」
 
すると彼女は苦笑いをして、

「いやだ。男の子とつきあったこともないのに、結婚だなんて。でも、いい相手がいれば考えなくもないわねぇ」

と、おっとりと答えた。

「そうよね。そうでしょう?」