..................あぁ、もう。

「...神楽」
「ん?」

パタパタと手で仰ぐようにして赤くなった顔に風を送っていた神楽が顔を上げる。



「...............キス、してい?」




...............。

...........................。

あれ。


「...!?」

ばっと、驚いて顔に手を当てているのは、その質問をされた神楽の方でなく、質問をした俺の方。

神楽はぽかーんとして固まっている。

やばい、やばいやばい。

何言ってんだよ、俺。


ちら、と神楽の顔を見ると、

「.....................」

無。

むしろ、「は?」と顔に書いてある。

やべぇ、これはやっちまった。



「...あー、いや。なんでもないわ」


何もなかったように後ろを向いて歩き出した。

「.........」
「神楽?早く来ないと置いて...」

神楽が近寄ってくるような様子がなく、不思議に思って呼びかける。

すると、くっと腕を引かれて体勢が低くなって。

なんだ、と思い神楽の方を向く。

けれどその一瞬早く、頬に柔らかいものが当たった。

「......!?」

それが神楽の唇だと気づくのに少し時間がかかった。



「は、はい!キスした!今はこれで精一杯!!」

神楽はそう言って、駆け出した。

「............え」

ぽけーっとして神楽の背中を見つめる。

うわ。

これは。

「...はっ」


ダッシュで神楽に追いつき、そのまま抱きしめた。


「え、ちょ!?精一杯っていったじゃな、」

「いやもー、お前可愛い」

「...!?」


そっと離して頭を撫でる。


「......か、からかわないでよ...っ」

真っ赤になってそう言う神楽はとてつもなく可愛くて。

完全に惚れてしまってんだな、と思った。


「.........響くん」
「ん?」


「......好き」

「っ!?」


神楽は俺を見て、いたずらっ子のように笑った。



「...神楽には、たぶんかなわないわ」

俺はコイツには勝てないんだろうな。