「おじゃましまーす」

「どうぞ...」


神楽の家はとても整った、清潔感のある家だった。


家を見回していると、神楽に呼ばれる。

彼女は柔らかそうなソファを指して


「そこら辺に座ってて。今飲み物持ってくる......」


と、言うので。


そのまま神楽の手を引っ張ってみた。



「っ!ちょ、」


神楽に示されたソファに座り、その上から彼女を抱き込む。


「......あったけぇ」

「ち、ちょっと響くっ、え!」


神楽のうなじに唇を当て、強く吸ってみる。

「っ!?」


戸惑った様子の神楽。

そのうなじから唇を離すと、紅い痕が着いていた。


わー、綺麗についた。


「な、にし、たの」

片言で真っ赤になっている神楽が可愛い。

「キスマーク」


そう言って痕を舐める。

「ひゃっ!!」


すると神楽はどうにかして俺から逃げようとするから。


くるっと回して、目を合わせるようにして座らせる。


「あああの響くん...?」

「............」



「......ふ」


俺は調子に乗ってもう一度神楽の首筋に吸い付いた。

今度は横の方の、見えるか見えないかというあたりに。


「っ!仲直りした途端やり過ぎよ!」

「今まで神楽に触れなかったからその分」


うー、と唸る神楽を抱きしめたまま、ポケットを探る。


そして小さな箱を出して、神楽に見せる。

「?」


きょとん、として箱を見つめる神楽の前で箱を開けると、そこには。


「、え」

青と赤のストーンが埋め込まれた模様が彫られた銀色のリング。

が、大小2つ並んでいる。


「これ......」

「ペアリング。仲直りできたら渡そうと思ってた」

小さい方のリングを取り出し、彼女の右手の薬指にはめる。


リングは元からそこにあったかのように綺麗にはまった。


「......綺麗」

神楽は光に照らすようにしばらくリングを眺めていたけれど、ハッとしたように大きい方のリングを手に取った。


そしておもむろに俺の右手を取ると、薬指にはめた。


「ふふっ、お揃いね」

嬉しそうに笑う神楽に、買ってよかったと思った。



昨日、神楽に電話をかけた後、俺は知り合いの宝石店に電話をかけた。

まだやっているか聞いて、それからすぐに店に向かった。


そこで神楽に似合いそうなペアのリングと、シルバーネックレスを購入。



リングを埋めていたクッションを外すと、シルバーネックレスが2本出てくる。

神楽の指からリングを抜いてネックレスに通し、彼女の首にかけた。


「?」

先ほどと同じくきょとんとした様子の神楽に微笑む。

「これだったら、学校でも付けれんだろ?」

そう言うと、彼女は納得したように頷いた。


残念ながら、それだけの意味じゃないんだけどね。



「...神楽、知ってた?男からのアクセサリーのプレゼントの意味」

「え?」



純粋な神楽へ、いたずらごころが湧いた。


「主に三つがあるんだけど、ブレスレットの場合は、手錠」

「?!」

「指輪は、婚約指輪。ネックレスは...」

最後は神楽の耳元で囁いた。

「...首輪」

「っ!?」


驚いた様子で真っ赤になった神楽。

それが可愛くて仕方ない。


「俺は指輪とネックレスだから...婚約と、離れないように首輪」

「......神楽は俺のだよ?」



そう囁くと、神楽は真っ赤になったまま、もう一本のネックレスを手に取り、俺の指輪を抜いた。

それをネックレスに通し、俺の首にかけた。


「......じゃあ、これで響くんも私のよ?」

.........ふっ。



「.........一生、俺は神楽のだよ」


そっと彼女の頬に口付けた。


そして、


じーっと神楽を見つめる。

.........それだけで伝わるような気がして。


「っ......」

伝わったのかわからないが、彼女は赤かった顔をもっと紅くした。


「あ...ぅ.........目、つぶって!」


どうやらちゃんと伝わったらしい。

俺が素直に目を閉じると、躊躇うような気配がする。


そしてそれから1分後。

耐えられなくなって薄目を開ける。


狭い視界の中で、真っ赤な顔で困っている神楽が近づいてくる。

けれど、唇が触れる直前、体を引いてしまう。


それが何度か続き、神楽が涙目になってきた頃。


...............うん、無理限界。

俺は神楽の後頭部に手を当てて、彼女を引き寄せた。

「っ!?」


柔らかい感触が触れる。

神楽とのキスは甘く感じる。


1度口付けたら離し難くなって。

俺は何度も彼女に口付けた。