響くんは、私を裏切ったわけじゃない。

そう言ってくれて、正直安心した。


もう戻れないと思っていたけれど、



彼にもう一度抱きしめてもらったとき、この温もりが消えなければいいって思った。

「神楽と一緒にいたい」

「神楽が欲しかった」


彼の言葉が心に落ちてくる。


その言葉はきっと。


「好き。大好き」

「...............愛してる」



並べられた不器用な言葉。

それはきっと、



「...ありがとう」

私が一番欲しかった言葉。


その後に告げた謝罪は彼との距離を消したくて。


つい1週間程前は逆の言葉を言っていたのに、不思議な感じがした。



「.........愛してる」

もう一度響くんが口に出してくれた言葉に、頬が緩む。


それを隠すように、響くんの胸に顔を寄せた。




すると、彼の力が強くなる。

「...響くん?」

そっと顔を上げると、彼の目が少しだけ潤んでいた。



「......神楽」

この甘い声は、


「っ、」

私はぎゅっと目をつぶった。


すると、かすかに笑う気配がして、彼が近づいてくる。



少し顔を上げたとき、ドアが開く音がした。

するとすぐに気の抜けた声が聞こえる。


「おい、お前らー。何時だと思ってんだー?とっくに下校時間は過ぎてんぞー」

どうやら見回りの先生が来てしまったらしい。

先生が廊下に出て、しばらくしてから。

「...っ!!!」



我に返った私は急いで響くんから離れ、廊下に出た。