ふらふらと心無い足取りで帰っていると、なんとなく家に入りづらくて、私は散歩がてら歩くことにした。



歩き続けてどのくらいたっただろう。

日が傾いて、夕日が浮かぶ。


そのときふと耳に入ってきた声。


なんとなく引き寄せられて、その声がした方を向く。

そこには、幸せそうに寄り添うカップルがいた。


ふわふわとしたはちみつ色の髪をした女の子と、しっかりした感じの男の子。


2人はとても幸せそうで。


「..................」

私たちも、あんなふうに寄り添っていたのに。

あの一瞬の場面を見てしまった時から、すべてが崩れた。


私は...。


もう、頭の中はぐちゃぐちゃだった。





彼を信じたい。

優しく笑ってくれた響くんを信じたい。


けれどその反面、また裏切られたら、という不安が拭えない。

また、独りにされたらという不安。






.....................もう、わけがわからない。




自分なのに、自分の感情じゃないみたいに、相反する思考に飲み込まれそう。


涙さえ、もう出てこない。




ふと目を閉じたとき、声をかけられた。

「.........女神?」


...............は?


目を開けてしまったのは、彼の声だったから。

響くんといつも一緒にいる、あの薔薇の彼。


「......何してんすか」

彼は信じられないというような顔で私を見た。

その表情は、少し怒りが見える。





「.....................あなたこそ、響くんと一緒じゃないの」


もうあれからしばらくたっている。

彼ももう諦めた頃でしょう。


「.........響?...あいつなら、学校だと思うけど」

「...もういないでしょ、流石に」






「.........いや、たぶんまだいる」

「え?」








「...あいつ、本気だから」








胸がチクチクする。

どうしてそんなことが言えるの。


「あいつ、アンタのことは本気、みたいだから」

「どんだけ無視されても、突き放されても追いかけようとしたの、アンタだけなんだ」


胸がキュウっとなる。

やめて、やめて。




「アンタにまた、笑って欲しいって」



やめてよ。

知らなかったら、逃げきれたのに。


「......答えてやってよ」


「無理とか、断ってもいいから、無視なんかすんなよ」



..................そっか。


...もう、逃げられないんだ。




彼の真剣な声にも。

響くんの必死さからも。



私の気持ちからも。




気づいた時には走っていた。


学校へと。


響くんが、待っていてくれるかもしれない場所へと。




本当に居てくれる保証なんてない。

けど、今は


真剣な彼の声を信じたい。

響くんを、信じたい。