「............私って、弱虫なんだ」


彼を許すことすらできない。


全ては自分のため。

また彼に裏切られるのが怖いだけ。



彼はこんなときでも私を助けてくれたのに。



「..................響くん」


彼の名前を呼んだとき、カバンの中の携帯が震えた。


「...?」

携帯を見ると、電話。

ディスプレイには、『暁月 響』の文字。


「っ...」

............謝りたい。


お礼を言いたい。


無視し続けてごめんなさいって。

助けてくれてありがとうって。



けど、通話ボタンを押せない。


............なんで...。

通話ボタンのとこへ指を持っていくものの、触れることができない。


そうしているうちに、電話が切れてしまった。


「........................バカ」


なんでこんなにも、弱虫なんだろう。



そっと画面をもう一度見ると、点滅していた。

「............え?」


彼からの電話には留守電が入っていた。


「........................」

そっとボタンを押す。


それを耳に近づけると。


『...ごめん』

あまい、けれどどこか寂しそうな彼の声。


『......さっきは、とっさに動いて、抱きしめて、ごめん。...この前、不安にさせてごめん』


『でもやっぱり、直接神楽を見て思った』

『話がしたい』



目が熱い。

『.........明日の放課後。図書室で待ってる。...いつまでも』


『...お前は終わったって思ってるかも知んねぇけど、俺は』



『..................いや、明日、それも言う』


ポツリと切れた電話を耳から離せずに。



いつの間にか、止まったはずの涙が頬を伝っていた。