「............嘘だろ...」


どうして神楽がここに。

そう思っても仕方ない。


どれだけ叫んでも、どれだけいい募っても、神楽は俺の話なんて聞いちゃくれなかった。


......最悪だ。


まったくなんとも思ってない女にキスされて。

それを一番大切な人に見られた。







そして、誤解させた。








「ねぇ響くん、勝手に走り出して置いてくなんて酷くない?」


ふと聞こえた声は今一番聞きたくない声。


「.....................」

「ねぇ聞いてる?」


うるさい。

お前のことなんかどうでもいい。

どこかへいけ。


「ねぇ」

するりと腕に絡み付いてくる手を振り払う。

「な、何するのよ」


何する?

こっちのセリフだ。


俺は耐えきれなくなり、女を壁に叩きつけた。


「いたっ......響、く...ん?」

「......お前なんてどうでもいい。虫酸が走る。.........」


怯えたように俺をみる女。

その目にすらイラついた。


「......消えろ」


そう言うと、女は逃げ出した。






1人残された俺は、神楽の手を掴んだ方の手を見つめていることしかできなかった。