「なぁなぁ響!!」
朝、登校してすぐに聞こえてきたのは中学時代からの友人の亮の声。
「ん〜?」
相変わらず朝から元気な亮にくらべ、俺の静かなこと。
「今度さ、羽鳥女子高と合コンやんだけど、来るだろ!?ってか来て!マジで!頼む!!お前目当ての子が多いんだよ!」
「ん〜、いいけど、なんか奢れな?」
今は彼女とかいないし。
羽鳥の女子は可愛い子多いし?
「おおおおマジか!!そりゃあ奢ったりますよ響さん!!」
「忘れんなよ〜」
自分で言うことではないかもしれないけど、一応俺の容姿は整っているらしい。
おかげで女に困ったことはない。
ちらと隣を見ると、亮は早速誰かにメールを送っているようで。
......コイツも顔はいいんだけどな。
「あ、っつーかさ、聞いた?」
「何を?」
質問し返すと、亮がスマホから目線を外して窓の方を見た。
「ほら、’’姫’’。またフッたって話」
「姫?あぁ、山城 神楽、だっけ?」
「そうそう。絶っってぇ笑わねぇっていう、’’人形姫’’」
どうでもいいけど、変なあだ名だよな。
人魚姫と人形をかけて人形姫。
窓越しに見えるその横顔は、ヘタな芸能人よりよほど整っている。
静かに読書をする黒髪美少女は、雰囲気すらも綺麗だった。
「今度は誰?」
「知らねーの?湯崎だよ、湯崎 翔」
「あの金髪?」
「いえすいえす」
「あれは無理だろうな」
「でも前は笹森だぜ?真逆じゃん?」
湯崎 翔は金髪で腰パンの、なんつーか、チャラチャラしてるやつで、問題児だのなんだの言われてるやつ。
それがフラれたのはなんとなくわかるけど。
笹森は校内で1位2位を争う真面目な秀才くん。
あんな真面目くんが告白っつーのにもビビったけど、それをフッたってのにもビビった。
「確かに真逆だわな」
「その前の黒崎と川瀬もキャラ違うしね。もうどんなのが好みなんだっつー話」
まぁそうだろうな。
どんなのになら恋心を向けるのか、気にならないわけではないけど。
「...あ、でもこういう話知らねぇ?」
「?」
「あの人形姫、告白されて断るときだけ笑うらしい。っていうの」
.....................。
「...マジで?」
「噂な、噂。でもそれが見たくてコクるやつも多いって話だぜ?」
「......まぁ確かに見たい気もするけどな」
「お?自分からは行かない響くんが興味を持つとはね?」
ふっと笑って見せると、亮はやれやれと肩を竦めた。