「あの者を捕らえますか?」

 薄暗い部屋で、一人の男が言った。

 その言葉は目の前の老人…村長に向けられたようだ。

 村長は考えるように目をつむっていたが、やがて口を開いた。

「いたしかたあるまい。…あの者は知ってしまったのだから…。」

 暗闇に低い声が響く。

 男たちが頷いて外へ出て行った。

 幸せな時間はそう長く続かない。

 そういうものだ。

 それでも、神様…。

 この雨音が刻を刻む間だけでも、あの子らに幸せをお与えください。

 老人は祈るように空を見上げた…。