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「ふう・・・」


引きずるようにして抱えた先輩をベッドの上へ置くと、先輩は苦しそうに顔をゆがめてげほげほと咳をした。


艶やかな黒髪が汗で顔に張り付く。黙っていれば美形なのに。・・・美人、の方があってるか。



ただいま、先輩のマンションの寝室で先輩の介抱してます、波田野結菜です。



張り付いた髪の毛を避けて額にそっと触れる。



まだ熱いし、汗もかいてる・・・


でも、会社に行かなきゃサボりと思われちゃうし。



「・・・」


応急処置だけとって、急いで会社に戻って報告して今日は早退しよう。



一応先輩なんだし、一刻も早く治ってもらわねば。


別に私情とかってわけじゃないし、人としてほっとけないだけ。



「っはあ・・・あつ・・・」




そこにそういう理由っていうのはないだけで、ただ先輩と後輩、ただそれだけ。




「・・・あつ・・・・って・・・なに、これ・・・」



急に手に伝わる温度はとても熱く、耳に伝わる声はかすれて私の中にすとんと落ちる。




「・・・・ゆい、なちゃん・・・?っはあ・・・」




「・・・先輩、暑いのは分かりますけどここで脱ごうとしないでください。ほら、寝ておく。無理に起きない。応急処置だけしていったん会社に戻ります」



ひとまず、汗を拭かなきゃ、このままじゃこじらせちゃうし。




「せんぱい、台所借ります・・・って・・・・」