ふと、手を止めた。

そして、僕の方を見て
強く手を握りなおしては



「……私、死んでもいいわ」



僕の時間はそこで止まった。

いつの間にか舞いはじめていた
冷たい花だけが
静かに時間をの流れを告げていた。


「……えっ?」

僕はどうにか声を絞りだした。
一言いうのが精一杯で
高鳴る胸を、抑えられなくて

君は不審な顔をして
僕の顔を見て、首を傾げた。

「……夏目漱石の、でしょう?
文学的な貴方らしいと思ったから
二葉亭四迷で返して見たのだけれど
……もしかして、本当に月の話?」


再び、眼鏡を取り出そうとした
君の手を
そっと掴んで引き寄せて

触れるか、触れないか
僕らは、中途半端に繋がった。


君と、目を合わせられなくて
林檎のように、顔を赤らめた僕に

「……意気地なし」

呟いた君の顔も
僕と同じように染まっていた。



繋がった手は
手袋越しだったけれど
とてもあたたかく感じたんだ。