マフラーを首に巻いて厚着をしても
この季節は風が身にしみる。

どうしてこんなに寒いのだろうか。
僕の吐いた不満すら、白く染まる。
隣を歩く君の不満も、真っ白だ。


「……解せぬ」

そう呟いて君は足を止めた。
それにつられて、僕も足を止める。

君は真っ白になった視界を
一生懸命拭っていた。

君は視界を取り戻すけれど
すぐにまた立ち止まり、拭う。

進む、止まる、拭う、進む、止まる。

何度か繰り返した君は
白い視界のまま、僕を見る。

「……」

無言で訴えかける君に
僕は苦笑してしまった。

僕と君が幼馴染だからか
僕が君と同じだからか
君の言いたいことはよく解る。


「……マスクをしていなければ
そんなに曇らないと思うけれど?
現に僕の眼鏡は曇っていないしね」


僕も君も、マスクなんてしていない。
それなのに、君の眼鏡は妙に曇る。


君は、眉を顰めては
おもむろに眼鏡を取って
上着のポケットに突っ込んでしまった。