私は"ごっこ遊び"をしていた事など忘れ、帰ってきた律子さんのほうに意識を全て奪われた。

「ねぇ、律子ママ。何を買ってきたの?」


「これは今日の夕飯の材料ですよ」

「ふーん。今日は何を作るの?」


「んー、今日はねぇ……カレーライスですよー」

買ってきた物を冷蔵庫などにしまいながら、律子さんは優しく答える。



「またカレーかぁ」

テッちゃんが不満そうに呟く。

「カレーだ、やった!」

アッちゃんはカレーが大好きな様子で、とても喜んでいる。



買ってきた物をしまい終えた律子さんはテッちゃんに尋ねる。

「哲也、宿題はちゃんと終わらせたの?」

「まだー」


「早くやっちゃいなさい。ご飯までには終わらせるのよ。この前言っていた漢字ドリルはもう終わってるの? あれは来週までだったわよね?」

「大丈夫だよ、間に合うようにやる」


「哲也はいつもそうやって間に合わないじゃない」

「これは大丈夫だよ」


「いいから、早くやりなさい」

「ちぇっ、分かったよ」

律子さんはその漂う雰囲気とは違い、躾は厳しかったようだ。そのギャップがまた、大人な感じがして私は好きだった。