華麗なる安部里奈

私はそんなテッちゃんに近づくと、そのまま斜め上を向いたテッちゃんの頬っぺたに自分の顔を近づけた。

そして、頬っぺたにチュッと口付けをする。




その瞬間、びっくりしたような顔を私のほうを見るテッちゃん。そして、何故か少し頬っぺたを左手で拭った。

「なっ……なにしてんだよ」

少し怒ったような言い方をしたが、顔は驚いたままで、怒っている様子はなかった。




「今日、私を庇ってくれたお礼」

「そんなのいいよ」


「でも、もうしちゃったもん。私のファーストキス」

「なんだよ、それ……」


べつに"ファーストキス"という言葉の意味が分からなかったわけではないだろうが、テッちゃんは困惑したような様子だった。

口と口でキスをしたわけではないし、厳密にはファーストキスではないのだろうが、私にとってはそれくらい大きな出来事だった。