「へぇー。正十郎、凄い。かっこいいね! それで、結婚する時はどんな風に言ったの?」

「ふふっ。プロポーズですか? プロポーズは……」

律子さんは人差し指を折り曲げて口の辺りに当て、思い出すようにしてゆっくりと話し始める。



「『僕と律子さんは磁石みたいなものなんだ。離そうとしても離れらない。だから、これからもずっと一緒に居てほしい』そう言ってくれましたよ」

律子さんは正十郎の話し方を真似て、とても嬉しそうな顔をして私にプロポーズの言葉を教えてくれた。



「磁石みたいだって。なにそれ! 凄い、正十郎!」


風邪も治りかけていた私は大興奮で話を聞き続けた。

結局その日は、シュシュを髪に着けたまま過ごしたのだが、「お嬢様が元気になるまで付けていてください」と言われたため、私は律子さんのお守りをもうしばらく借りておく事にした。


「お見舞い、ありがとう。律子ママ!」

「いえいえ。あっ、プロポーズの話はね……哲也達にも話した事がないんですよ。だから、女同士の秘密ですよ」

「うん! 分かった!」


「それでは、またね。元気になったらまた一緒にカレーを作りましょうね」

「うん! 楽しみにしてる!」


律子さんは私とカレーを作る約束をすると、正十郎との話をしたからか、少し頬を赤くしたまま微笑んでゆっくりと私の部屋をあとにしたのだった。