浅葱の雫

どうやらトシちゃんは子供にまで意地っ張りな様で。


尤も、私が子供の時も変わらないが。

幼い時から試衛館で過ごしてきた私としては皆仲良くしてほしいものだ。


だが現実はそう甘くはないということか。

私は宗ちゃんの手を引いてトシちゃんが居る部屋に向かう。


私と宗ちゃんは同じ部屋で過ごしているがトシちゃんは正式な門人ではない為、よく嶋崎先生の部屋に居る。

トシちゃんの実家は薬屋を営んでいて“石田散薬”というのが有名である。

私も昔熱がでたときにのまされたがとてつもなく苦かったのを覚えている。


行商のついでだとかなんとか言って此処に入り浸っている訳だが。


試衛館がついでと言うよりも行商がついでだと言った方が正しいんじゃないかな。

私はいつもの様に襖の前に立つと思いっきり開く。

スパーンッ!!


「トッシちゃーん!!」


案の定いつもの返事が返ってくる。


「煩せぇぞバカ雪!!勝手に入ってくるンじゃねぇ!!」


うるっさいなぁ。

軽く耳鳴りがした。


「そんなに叫ばないでよね。それより、また宗ちゃん泣かせたでしょ?」


そう言うと私の手を強く握っている宗ちゃんを見るトシちゃん。

だがすぐに視線を逸らして笑う。


「はっ、コイツが弱っちいのがいけねぇンだよ」

「そんなこと言ったってまだ九つだもの」

「オメーがその歳ぐらいの時はそんなに泣いてなかったじゃねぇかよ」

「トシちゃんは泣いてたけどね」


私がそう言うと、ポカッと頭を叩く。

私じゃなくて、宗ちゃんの頭を。


「っちょっと、どうして宗ちゃんを叩くのよ」

「ぅ……………ぐすっ」


涙を浮かべる宗ちゃんの頭を撫でる。

トシちゃんは刹那不服そうな顔をした。


「コイツが気にくわねぇからだよ」


だけどすぐにいつもの意地悪い笑みに変わる。


「武家の男のくせに情けねぇと思わねぇのか」


トシちゃんはそう言って部屋を去っていった。


「ごめんね、トシちゃんなんだか苛々してるみたい」


座り込んだ宗ちゃんに目線を合わせる様に屈む。