浅葱の雫

トシちゃんに可愛いなんて言われても鳥肌立つわ。


私がそう言うと、テメー言ってくれるじゃねぇか、とトシちゃんが私に掴みかかった。

そして私がトシちゃんの脛に蹴りを入れると私の顔目掛けて拳が飛んできた。


サッとそれを避けた私は壁に掛けてあった木刀を手に取った。


「やんのか、俺と」


トシちゃんも木刀を持ちくるくると回す。


「ええ、久しぶりにね」

「はっ、負けて泣くンじゃねぇぞ」

「それはこっちの台詞よ」

「生意気言ってられんのも今の内だぜ」


その声を合図にトシちゃんが踏み込む。

私は負けじと木刀を振った。

トシちゃんは独特の構えで木刀を振る。

“我流”だそうだが。

いつの間にか大乱闘になった私たち。

部屋の障子なんてもうビリビリで。


トシちゃんがトドメの構えをとった。

ならば、私も。


私はトシちゃんにトドメを刺すべく大きく踏み込んだ。

私の得意とするつきの構えを取る。