ここは、ガルシア。
ほぼ未開拓な島でここの国民はみんな
猟をして暮らしている。
だからみんな、銃を使うのがうまい。


おれ、オーロは、
20年前に母親が残した預言のせいで、
明日の朝早くにサハールへ
出発しなければならない。


ーったく、めんどくせえ…


顔すら知らない母親の言葉を、
どうして信じなきゃならねえんだ。
おれを産んですぐに死にやがって。


「まっ、いっか!」


適当にサハールをブラブラして、
預言の女の子には会えなかった
って言っちまえばいい。


「おい、オーロ!」
「あ!レヴィン叔父さん!」


レヴィン叔父さんは、
おれの母親の弟で、
今までおれを育ててくれた人だ。


「サハールは工業地帯らしい。」
「コーギョーチタイ?」
「ガルシアの格好だと目立つから…」


叔父さんはおれに、
変にキラキラした服をわたした。


「なんだよこれー。おかしくね?」
「あっちでは普通なんだ!」


嫌がるおれに、
叔父さんは無理やり服を着せた。


ーあ、そういえば…


「叔父さん。」
「ん?」
「前にさ、島の泉からクリスタルを持ち出したやつらいたじゃん?」
「…… ああ。」


叔父さんの顔が、一気に曇った。


「それってサハールのやつらだろ?」
「…ああ。ごめんな、危険なことをさせてしまって。」


叔父さんはそう言いながら、
おれの母親の預言書を手にとった。


「オーロ、おまえの母親は、本当に有名な預言者だったんだ。彼女の預言が外れたところを、わたしは見たことがない。」
「…」
「だからきっと、おまえはベルナという女の子に会う。そしてその子を救うんだ。」
「…わかってるよ、叔父さん。」


その話は、何度も聞いた。
物心ついたときから、何度も。


だからおれは、「ベルナ」が嫌いだ。


聞き飽きた名前だった。
預言ごときに
おれの役割を決められた。
おれには選択肢がなかった。
それが本当に腹ただしかった。


「オーロ、ベルナという女の子に会ったら、この預言書を見せるんだ。」
「うん、わかった。」
「このリュックの中には、銃が2丁と弾を6ダース、あとサハールの地図を入れておいた。ここからなら、関所を通らずに中に入れるから。」


叔父さんは、
地図を指さしながら教えてくれた。
ぶっちゃけおれは方向音痴だから、
話を聞いていようといまいと、
同じことだった。


「それと、船には2日分の食料を積んでおいた。あとは…」
「まだあんのお?」


おれは話を聞くのが苦手だった。
長話には飽きてしまう。


「これで最後だ。」
「?…おまもり?」


叔父さんはおれに、
手のひらサイズのおまもりをくれた。
中には硬い板がはいっていた。


銃や弾、地図よりも、
そのおまもりが一番嬉しかった。


「ありがとう、叔父さん。」
「おう!」


叔父さんはにこりと笑って、
おれの頭をくしゃっとなでた。


「明日は朝早い。もう寝なさい。」


おれは頷いて、寝る支度を始めた。