さっきも言ったけど、
奇術師は魔法使いみたいだった。
なんでもできたよ。


海をまっぷたつに割ることや、
雲を呼び寄せて雨を降らせること。
人間業じゃなかった。


奇術師のことを
信仰するやつがほとんどだったが、
インチキだって言うやつもいた。
科学者とかね。
でも誰も仕掛けを見つけられなかった。
だから彼女を奇術師として
認めるしかなかったんだ。


僕の予想だけど、
彼女は人間じゃないと思う。


この世のどこかに、
神の血筋を引いた一族がいる
という話を耳にしたことがあるんだ。


人間だけにこの世を任せていたら
ろくなことが起こらないからね。
監視役になるために、
その血筋を絶やさないようにした。


僕は、あの奇術師が
そのうちの一人だと思ってる。


「…その奇術師は今どこに…?」


わからない。
クリスタルが砕け散ったあと、
姿をくらましてしまった。