わたしたちは島の裏までまわった。
そのときすでに、日は落ちていた。


「よし、島まで100m。泳ごう。」
「荷物とかはどうすんだ?」


オーロは、
武器が入ったリュックを指さした。
水に濡れるのはよくないはず。


「このビニール袋にいれて。」
「これ、重いから沈むぞ?」
「船についてる浮き輪に乗せて運ぶ。もう暗いから、きっと見つからない。」


わたしたちは支度を済ませた。


「「よし。」」


《バシャンッ》


同時に海に飛び込んだ。
思ったより水温は低かった。
長時間浸かるのは危ないと、
本能的に判断した。


なるべく波を立てないように
静かに泳いだ。


でも、わたしたちは忘れていた。


相手から見えないということは、
わたしたちにも見えない。


しばらく泳ぐと、手が金属に触れた。
顔を水面から出すと、
陸地に上がるためのはしごが
鉄の壁にくっついているのが見えた。


「オーロ、ここから上がろう。」
「ああ。」


《カンカンカン》


わたしたちはリズムよくのぼった。
すると、


「だれかいるのか!?」
「「!!」」


ーまずい…見張りがいたのか…


わたしたちは一旦止まったが、
びしょびしょに濡れた服から
滴がしたたりおち、
音がしてしまった。


「だれだ!?」


《タッタッタッタッ》


見張りが近付いてくる。


ーまずい……


ドクドクと心音が早く鳴る。


と、そのときだった。


《キーンコーンカーンコーン》


「!」


ーチャイム?


《こちら管制塔》


「!?」


デルタの声だった。
その声は、スピーカーによって、
国全体に流されていた。


《港にいる警備員に告ぐ》


わたしは耳をすました。
あの見張りの足音はしない。
おそらく放送を聞いているのだろう。


《ただちに研究所へ戻れ》


ー!


あの見張りは、
チッと小さく舌打ちをすると、
どこかへ駆けていった。


港には誰もいなくなり、
わたしたちは陸地にあがった。


「ラッキーだったな。」


オーロが服の裾を絞りながら言った。


「そうね。」


デルタに救われたのはむかつくけど。


こうしてわたしたちは、
サハールに密入国した。