「やっぱり船の音じゃないわ!?」
「くじらとか、そういうでっけえのの鳴き声じゃねえか?」
「…それよ!くじらよ!この船は鯨を釣り上げようとしてるんだわ!…でも、それにしては船が小さいわよね?」


わたしの船と比べたら大きいだけで、
とてもくじらを乗せられるような
船ではない。


「…たしかに。」


ーああ。


わたしは確信した。
こいつは
頭脳派じゃなくて肉体派だと。


《たすけて》


ー!?


「オーロ、いま何か言った?」
「あ?言ってねえけど。」
「うそ…たしかにいま…」


《たすけて》


また聞こえた。
頭に響く、子どもの声。
怯えているのか、声は震えていた。


「だれ!?だれなの!?」


わたしは必死に叫んだ。


「おいベルナ!どうした!」
「声が聞こえるの!」
「声?おれにはなにも…」


《捕まったら殺される》


「!?」


ー殺される?!


「だれに!?」


《この船のやつらに》


ー……船?


わたしはサハールの船を見上げた。
そしてわたしは気づいた。


「そうか…」


わたしはロケット弾を構えた。


「ベルナ!?どうするつもりだ!?」
「…この船を、沈める。」
「なっ…」


《ダーンッッ》


わたしは斜め上に向かって
ロケット弾を放った。
ロケット弾は空高く上がり、
そのあとサハールの船の甲板めがけて
落下した。


《《ボガーンッッ》》


「「「うわああああああ!!!」」」


サハールの船員の叫び声と同時に、
生き残った他の船員が
わたしたちに銃をむけた。


「やべえ!」
「ちょっ!ちょっと!」


オーロは無理やりわたしを
船の操縦室に押し込み、


「運転しろ!おれが迎え撃つ!」
「あんた、銃使えんの!?」


わたしは
船のエンジンをかけながら叫んだ。


「むしろ銃しか使えねえ!」


《ダダダダダダッッ》


激しい銃声が響いた。
わたしは全速力で
サハールの船と距離をとった。


《ダンッダンッ》


相手ががむしゃらに撃つのに対して、
オーロは一発一発を丁寧に撃ち、
敵を一人ずつ倒した。


ー銃の腕はたしかね。


《《《バーンッッッ》》》


「「!?」」


凄まじい爆発音とともに、
サハールの船が沈み始めた。