サハールの船は
網を引き上げるのに夢中だったから、
背後に回り込むのは簡単だった。


そしてわたしも、
周りが見えていなかった。


わたしはリュックの中から
ロケット弾を取り出した。
すると背後から、


「おい。」


という男の声が聞こえた。
びくっとして振り返ると、
そこには変な服を着た、
同い年ぐらいの男がいた。


ーいつからこの船に!?


男の後ろを見ると、
わたしの船のすぐ後ろに、
ぴったりと船が寄せられていた。


「おまえ、だれだ!?」
「おいおい、そんなの向けんなよ。」


その男はロケット弾を指さした。


「おれはオーロ。おまえ、サハールが憎いんだろ?」
「…だったらなんだ。」


ー仲間だとでも言うのか?


「手を組もうぜ。腰にささった剣といい、そのロケット弾といい、頼りになりそうだからな。」
「…おまえもサハールが憎いのか?」


わたしは恐る恐る聞いた。


「ああ。おれの故郷はガルシアってとこなんだけど、そこにあったクリスタルをサハールに持ってかれたんだ。」
「…ガルシア?」


わたしは不思議に思った。


「ガルシアでは、人の居住は確認されていないはずだけど。」
「は?なに言ってんだ。いっぱいいるぜ?みんな森に住んでるけどな。」


嘘を言っているようには
見えなかった。


ー…信じてみるか。


「…わかった、手を組もう。わたしはベルナ。」
「オッケー、ベルナ。よろし……え?ベルナ!?」
「!?」


急にオーロが大声を出したから、
わたしは驚いてたじろいだ。


「なに、そんな…驚いてんの?」
「うっわー、まじかよー。預言は本当だったんだな…。」
「預言?」


わたしの声はもう
届いていないらしい。


「おまえ、サハールに行くんだろ?」
「ええ、そうだけど。」
「やめろ、引き返せ。」
「…はあ!?!?」


意味がわからなかった。


「なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないのよ!」
「俺の役目だからだ。」


ますます何を言っているのか
わからなくなった。


と、そのとき。


《ブオオオオオオオッ》


「「!?」」


先ほどの音がした。