「さーてと。」


わたしは海図を眺めた。


ーこのまま順調にいけばいいけど。


空は雲一つない晴天だった。
嵐さへ起きなければ、
2日でサハールに着くだろう。


《ぐぎゅるるる》


「…おなかすいた。」


わたしは床下の冷蔵庫をあさった。
食料は3日分積んできた。


「今日は…パンとバナナにし…」


ー……バナナ…。


わたしは、父の好物が
バナナだったことを思い出した。
そして、デルタ叔父さん…
いや、デルタが父を
殺したことも思い出した。


ーっ……。


つらかった。
腹ただしかった。
デルタが憎い。
サハールが憎い。


《ぽろっ》


ー!


涙が溢れた。
思ってみれば、
色んなことがありすぎて
泣く暇もなかった。


「お父さんっ…お母さんっ…。」


本当の親じゃないなんて
未だに信じられないけど、
やっぱり二人はわたしの親。
他に親なんていないよ。


《ブオオオオオオオッ》


ー!?


「え!?なに!?」


動物の遠吠えのようなものが響いた。
しかし周りを見渡してもなにも…


「…ん?…船?」


200メートルほど前方に、
わたしのより10倍ぐらい大きい船。
双眼鏡を通してよく見ると、
たくさんの船員が、一生懸命に
網をひいていた。


「でも、さっきの音はなんだろ?」


ーあの船の音?動物っぽかったけど。


わたしはもう一度双眼鏡を覗いて
その船を観察した。


ー!?!?


その船の側面には、
サハールのマークが彫られていた。


「サハールの…船…?」


パラマで見た光景が、
頭の中を駆け巡った。


ーっ……


身体が震えた。
それと同時に強い殺意が芽生えた。


ー沈めてやる……!!!


船の大きさのことや、
武器のこととかは全く頭になかった。
わたしの中にあった、
大事なものを守れなかった悔しさが
そうさせたんだとおもう。