分裂世界の緋色姫


「う、うるさいなぁ、もう」

アスカはふんっと窓の方を向いた。

外はゴロゴロと雷が鳴っている。

午前中よりも天候が悪化している。

「はぁ〜あ」

アスカはまた机に突っ伏し、目をゆっくり閉じた。

もう、このまま寝ちゃおうかな。

「おい、アスカ」

視線を横にずらす。

タケルは宿題のプリントを押しつけてきた。

「ちょ、え?何?」

アスカはプリントに目を落とした。

完璧に埋まっている解答欄の下にはタケルの字で"信川アスカ"と書かれている。

「え、タケル、これ…」

アスカの言葉を遮るようにタケルは勢いよく立ち上がった。


「先生ー、俺宿題忘れました」

アスカは目を丸くしてタケルを見つめた。