「素直じゃないなぁ…もう。早く購買行こーよ。パンが無くなる」
「あっそうだった」
アスカは教科書を引き出しの中に乱暴に突っ込むと、カバンから財布を取り出して席を立った。
「何のパンにする?」
「そーだなぁ、やっぱ本番の焼きそばパ…何か変だな」
「定番」
「あー!そ。それそれ!やっぱうちらって一心同体だなぁ」
「以・心・伝・心!!ホントバカなんだね」
呆れたように笑うナツキと話しながら歩くアスカ。
その後ろ姿をタケルがほんのり赤い顔で見つめていた。
「ふーっ、お腹いっぱい!!」
アスカは勢いよく息を吐き出した。
「もぅ、アスカゴミ片付けてよ〜」
ナツキがぶつくさ文句を言いながらパンの袋をゴミ箱に捨てている。
自分のだけ。
「私のもやってよぉ」
アスカが頬を膨らませた。
「自分でやれっ」
ナツキはアスカに袋をぐいぐいと押し付ける。
「もー、仕方ないなぁ」
「あんた何様だよ」
「そう、私は人類の神となる存在、お子様!」
「ガキか」
アスカはゴミ箱に袋を投げ捨てるとスマホを取り出しながら席に戻った。
「あーぁ。この疎開生活もいつまで続くんだろうね?」
アスカは前髪を直しながら言った。
「さあね?」
ナツキはふぅ、とため息をついた。
2016年9月22日。
信川アスカは生まれた。


