今度こそ、練愛


「申し訳ありません、もう一度確認して参りますので、こちらにお掛けになってお待ちください」



苦し紛れに窓際のテーブルへと案内する。



高杉さんと仲岡さんはまだ他のお客さんの対応中。仲岡さんが何種類かの花を手にカウンターへと駆け込んだと思ったら、花をラッピングし始める。
まだ、もうしばらく掛かりそう。



「もしピンクがなかったら……、あの濃いピンクの花は……」



と言って、お客さんが目を細めて指差した。指先を辿ると言われた通りの濃いピンク色の花。



よかった、もう探さなくていいんだ。



「あちらの花でよろしいですか? 何本ご用意致しましょうか?」



ほっとして問いかけると、お客さんが振り向いた。一瞬怖い顔で私を見上げて、ふわっと表情を緩ませる。



「違うの、あの花は何て言うの? ここからじゃよく見えなくて」



お客さんの言葉が私を凍りつかせる。



あの花は……何? バラっぽい?



私だって、ここからじゃネームプレートなんて見えない。かと言って名前を確かめに行くなんて、花屋店員としては非常に恥ずかしい。
即答できない時点で十分恥ずかしいのだけど。



もしかしたら、このお客さんはわざと私に尋ねているんじゃないか。私が花の名前を答えられるのか試しているんじゃないか。