今度こそ、練愛


確認のため復唱しようと花のネームプレートを探したけれど見当たらない。
今朝仕分ける時につけ忘れたのか、思い当たるようなことはないけれど急いで探して来なければ。



「こちらの花ですね……、ちょっと探して参りますので少々お待ち頂けますか?」



くるっと方向転換してカウンターの裏側の冷蔵庫へと向かう。花の名前がわからないから、さっきの花の形を思い出しながら。



様々な色や形の花が並んだ中、いつの間にかピンクばかりを頼りに探していた。覚えていたはずの花の形があやふやになって、どんな花だったのかわからなくなってくる。
あまり見慣れていないものだから余計に。



目を閉じて思い返してみても花の形は完全にぼやけてしまって、頼んだお客さんの顔だけがリアルに思い出される。



いっそお客さんをここに連れてきて、探してもらった方が早いのではないか。
名案だと心の中で自画自賛。
だけど実際に連れて来れるはずはない。



もう一度、花を確認しに行くことにした。



店内に現れた私を見つけて、お客さんの表情が明るくなって期待を込めた目に変わる。私が目的の花を見つけたことを知らせにきたと思い込んでいるに違いない。



ごめんなさい、違うんです。
正直に言えるはずもなく愛想笑い。