店内へと足を踏み出した途端に、圧し掛かってくる緊張感が胸の鼓動を一気に加速させる。
さっきシミュレーションしたはずのお客さんへの対応が、緊張感に押し潰されて消えていく。
歩き出したものの、動揺のおかげでぎこちなくなってしまう。歩きながら直そうと思うのに、直す方法がわからなくなってきた。
自分がこんなに緊張するなんて思ってもみなかったから混乱するばかり。
とりあえず、一度立ち止まって気持ちを落ち着かせよう。
そう思った矢先、何かにつまずいた。
転けそうになって慌てて堪えた危なっかしいヒールの音が店内に響く。店内にいたお客さんだけでなく、高杉さんと仲岡さんも何事かと言いたげな顔で振り返る。
「すみません」
振り返った皆に対して謝ったけれど、声が掠れて出てこない。恥ずかしくて伏せた顔を二度と上げたくない気分。
それでも俯き加減のまま、ようやくお客さんのところへと辿り着いた。
「いらっしゃいませ、何をお探しですか?」
気を取り直して、まずは笑顔でご挨拶。
私は上手く笑えているのだろうか、必死で作った笑顔は不自然ではなかっただろうか。
「この花が欲しいのだけど、他の色はある? ピンク系の色があったら頂ける?」
お客さんが花を指差した。

