母と同じ年頃か、もう少し年上と思われる物腰の柔らかそうなおばさんが、助けを求めるような目で私を見つめてる。じっと見つめられているのに気付きながら、私はカウンターの奥で他の仕事に追われているふりをしていた。
うん、これはピンチだ。
対処法がわからず、ひたすらドキドキしているところに高杉さんが駆け寄ってきてくれた。困っている私を助けてくれるのかと思いきや。
「ごめん、ご用件だけお聞きして、すぐに行くから」
と早口で告げて、私に会計を託す。
レジ係の仕事を終えたら、高杉さんはさっさと対応中のお客さんの元へと去っていく。
私にどうしろと言うの……
高杉さんの背中に向かって懸命に視線を注ぐのに、まったく気づいてくれる気配すらない。気づいているのに無視しているのかもしれない。
ご用件だけ、それぐらいなら私でも何とかなるかもしれない。
とりあえず用件を聞いたら、高杉さんに引き継いだらいいんだ。その間お客様には窓際のテーブル席に座って、ゆったりと待っていてもらえばいい。
頭の中でお客さんへの第一声からシミュレーション。私にもできるかもしれないと希望の光が差し込んでくる。
意を決して、カウンターの外へ。

