今度こそ、練愛


木戸先輩の立場はよくわかる。客先との間に立たされてどうしようもないことも、今後の仕事の受注にも関わるピンチだということも。



だけど、それって脅迫じゃない?



しかも仕事とプライベートを混同するって許せない。
いっそう福沢さんが嫌いになった。というか話したくもないし、もう二度と顔も見たくない。



「私、謝りたくありません」

「ちょっと大隈さん、やめてくれよ……、俺たちの立場わかってる?」

「はい、よくわかってます」

「それなら一緒に行って謝ってくれよ、午後からもう一度客先に……」

「行きません、私、会社辞めます」

「は?」



木戸先輩の目が点になってるけど、私はもう揺るがない。



きっと福沢さんは金曜日の腹いせに、私に謝罪させようとしているんだ。今回謝ったとしても今後仕事上で関わりがある以上、引き続き何か要求されるに決まっている。



それなら、きっぱりと関係を断ってやる。



私が負けたんじゃない。
これは勝ち逃げ。



一度は辞めようと思っていたから未練なんてない。



言ってしまったら、とても清々しい気分。