自分がこんなにも脆い人間だと思わなかった。
こんなことで思い知らされるとは、あんな言葉に踊らされていたなんて思わなかった。
視界が滲んでいくのに気づいたら、もっと悔しくなってくる。
どうして私が泣かなければいけないの……
視界の端に差し込んできたオレンジ色の光に気づいて振り向くと、温かな光に包まれたカフェ。ガラス越しに大通りを望むカウンター席には肩を寄せ合うカップルが見える。
先週の日曜日、昭仁と私もあんな風だった。
昭仁はホットコーヒー、私は温かいカフェラテを飲みながらひと皿のパンケーキを仲良く分け合って食べたんだ。
思い出すと悲しくなってきて、涙が溢れそうになる。
「待って!」
重い足を引きずって歩き出そうとする私の背中に、突き刺さるような甲高い声が飛んできた。
私が呼ばれたのかと思って声の方へと振り向くと、カフェの入り口から出てきたカップルの姿。
先に店を出てきた男性は平然としているのに、後から追いかける女性の表情は怒りに満ちている。彼女は私を呼んだのではなく、彼を呼び止めたかったらしい。
見るからに険悪な雰囲気。

