金曜日の夜というのは、普段よりも時間がゆっくり進むように感じてしまう。さらに一時間ぐらい時間が長いような気がして、何をするにもペースが遅くなりがち。
オーダーストップだと言われて腕時計へと視線を落としたら、もう日が変わる手前だった。なんとなく眠いと感じていたのはお酒のせいだけではなかったらしい。
ようやく懇親会は終了。
「お疲れ様でした、また月曜日によろしくお願いします」
これからまだ飲んで帰ろうと盛り上がる三人を、私は笑顔で振り切った。料理とお酒は美味しかったけど精神的に疲れたから、早く帰って早く寝よう。
「大隈さーん、待って」
駅へと歩き始めた途端、追いかけてきたのは福沢さん。駆け寄ってくる福沢さんの後ろには、木戸先輩と伊藤さんの背中が遠ざかっていくのが見える。
嫌な予感は的中。
「大隈さん、一緒に帰ろう」
福沢さんが隣に並んで、予想通りの言葉を発した。
時間など気にしていないのか、福沢さんはゆっくりと歩きながら自分のことばかり話してる。私はただ相槌を打つだけ。
もっと早く歩きたいのにいらいらする。
急かすつもりで時計を何度と見てるのに、福沢さんには通用しない。素知らぬ顔で笑みを浮かべて話し続ける。

