今度こそ、練愛


「二十……八です」



女性に年齢なんて尋ねないでよ……
私もお酒が入ってるから、つい本音が出てしまいそうになるのを我慢。素直に答えるのもうっとおしいから、少し酔ったふりでさらりと答えた。



「いいねぇ、二十八かあ……、彼氏は? いるの?」



ああ、やっぱりうっとおしい。
木戸先輩も客先二人と一緒になって、にやにやした顔で私の答えを待っている。



私が昭仁と別れてまだ間もないことを知ってるなら、少し話を逸らすぐらいの配慮をしてくれてもいいのに。いつもの木戸先輩なら気がつきそうなものだけど、かなりお酒が入ってるから気がつかないらしい。



「彼氏は今はいません、少し前に別れたばかりなので……」

「そうなの? 付き合いは長かったの? 何で別れたの?」



素直に答えてしまったことを後悔したけど遅かった。客先二人は私の答えに食いついて、しばらく離れてくれそうにない。



「価値観の違い……です、どちらが悪いとか、そういうのは無いんです」

「ふぅん、大隈さんは優しいね。別れた彼のことを庇ってるの?」

「いいえ、そんなことないです。本当に合わなくなったので……、無理して合わせるのは嫌だったから」



ふとグラスに触れた手に、客先のひとり福沢さんが手を重ねる。驚いて引っ込めようとしたら両手で掴まれて、引き寄せられる。