『でもねえ……、あんな人の多い所で誰に見られてるかわからないのに、普通はできないわよ、それで、彼氏に泣き縋ってた子はどうしたの?』
『しばらく座り込んだまま泣いてました、大隈さんたちは知らん顔して駐車場へ行ってしまって……』
『ちょっと、それって略奪じゃない? 泣いてた彼女の彼氏だったのに、大隈さんが奪ったんじゃない?』
『あ、そうかもしれませんね。怖いかも……、そういえば大隈さんか彼氏のお母さんも一緒にいましたよ』
『ええ? お母さんも居たのに? 絶対にあり得ないわ……、大隈さんって大人しそうなのに、見る目変わりそう』
ふたりの会話はまさに、母に会ってもらうために川畑さんに昭仁のフリをしてもらった時のこと。あの時は私も必死だったから、周りの目なんて気にする余裕なんてなかった。
まさか、そんなところを社内の人に見られてしまうなんて。思いきり誤解されてしまうなんて、運が悪いでは済まされない。
やっぱり悪いことはするものじゃない。
悪い噂はあっという間に広まるものだと聞いたことがあったけれど、本当だったと思い知らされた。日を追うごとに社内の人たちの私を見る目が変わっていく。
しかも悪い噂は、必要以上に過大表現されてしまうものらしい。

