今度こそ、練愛


川畑さんと母は車中ですっかり打ち解けていた。



アウトレットモールに着いた母はさらにマイペースではしゃぎ出す。まるで学生のような好奇心と体力で目新しい物を見つけては、私の手を引いて店へと入っていく。



川畑さんは母の買った荷物を持って、私たちの後ろをついて来るだけ。仕事とはいえ少しも嫌な顔もせず、にこやかな雰囲気を崩さない。
いい彼氏を徹底して演じてくれている。



初めて会った彼氏と親って、こんなに打ち解けてしまえるものなのかな。



不思議に思いながらも、一番最初に脱落したのは私。



「お母さん、もう疲れたから少し休憩しようよ」

「そうね、ちょっと疲れたわね、どこかいいお店ないかしら?」



と言って、母は真っ先に川畑さんを見上げる。私よりも川畑さんを頼りにしているらしい。



「あの店でお茶にしましょうか、海が見える席があるから、空いていたら綺麗な景色がみれますよ」



川畑さんも母に笑顔で答える。
顔を見合わせるふたりを見ていたら複雑な気持ち。
もしも彼が本物の彼氏だったら、嫉妬してしまいそうな仲の良さ。



本当に母に彼氏を紹介したかったな……



心苦しさがやがて決意へと変わっていく。
いつか本当に、こんな風に彼氏を紹介したい。