今度こそ、練愛


「代行なんて頼むんじゃなかった」



ぽろっと零した途端に、山中さんが睨みつけた。
怯んだ私の肩を引き寄せて、ぐいと顔を近づける。鼻先が触れそうなほど、すれすれの距離。



「違うだろ? 嘘なんてつくんじゃなかった、だろ? 有希が代行頼まなかったら、俺たち出会わなかったんだから」



囁くような声で告げた山中さんは、照れ臭そうに目を細める。



「ごめん、山中さんが代行してくれたおかげだね」

「ん……、そう言われると変な感じかな?」



鼻先を触れ合わせながら、山中さんと笑い合う。



列車の到着を告げるメロディが流れ始めた。
そろそろと立ち上がろうととする私を引き止めて、再び山中さんが顔を覗き込んだ。



「有希、山中さんって呼ぶのはやめような」

「うん、万里……さん?」

「万里でいいよ」

「万里、ありがと」



言い終える前に唇が重なった。



今度こそ、私たちは本物の恋愛を始める。







- 完 -