花のテーマも配置も自分で考えて、自分の手で製作するのは難しいけれど楽しい。
難しいからこそ燃えてしまうのかもしれない。
前回の展示会の時よりも自由に創り上げることができるし、誰にも遠慮する必要がないのがなにより嬉しい。
いよいよ花の並んだ展示会場を見渡して、みんなでうっとりしてしまっていた。
「いい空間になったな、やっぱり今回の方がいきいきとして綺麗だ」
駆け付けてくれた山中さんも、私たちと一緒になって花に見入っている。
目を細める山中さんの顔を見ていたら愛おしくてたまらなくて、さりげなく隣りに並んでしまった。
「ありがとうございました、私のミスだったのに助けて頂いて」
「気にしないでって言っただろ? 誰にでもミスはあるんだから、高杉さんだって昔いろんな失敗をしてきたんだ」
「高杉さんが? 何でも完璧にこなしそうなのに?」
「そんなことないよ、有希と同じように誤発注したことだってある、内緒だけどね」
会場の花を見て回る高杉さんや岩倉君を窺いながら、山中さんが声を潜める。こんなところで名前を呼ばたら恥ずかしいし、聴かれてしまわないかとひやひやしてしまう。
そっと手を握り締めてみたいけれど、ここは我慢しなければ。
私たちの交際は誰も知らないんだから。

