「申し訳ありません、少し考えごとをしていました。失礼いたしました」
深々と頭を下げる山中さんに続いて、私たちも失礼を詫びた。佐久間さんは慌てて私たちに頭を上げるようにと促す。
「謝らないで、そんなつもりで言ったんじゃないのよ。ごめんなさいね」
そう言って、佐久間さんは再び岩倉君と共に花を探している。にこやかに話しながら選んでいる顔が、次第に強張っていく。
すると突然、岩倉君が私たちの方へと駆け寄ってきた。
「佐久間さんが、花を……協力してくださるそうです」
岩倉君にしては珍しく息を切らせて言うから、私たちはただ驚いて顔を見合わせるばかり。
後からゆっくりとやって来た佐久間さんが、にこりと笑う。
「協会の友達や生徒さんに声をかけてみるわ、お稽古に使わせてもらえたら助かるし」
佐久間さんは生け花の先生をしているという。生徒や市内の生け花協会の先生仲間に頼んでくれると言ってくれた。
「ありがとうございます」
突然舞い込んだ有り難い言葉が嬉しくて、私たちは何度も佐久間さんに頭を下げる。

