日が沈んで暗くなってきた景色の中に、ぽうっと浮かんだ街灯の灯りが流れていく。
配達のワンボックスカーは高さがあるから車窓からの眺めはいいけれど、山中さんの車の方が乗り心地はいいかも。そんなことを考えながらも合併の話が気になってしまう。
どうして別業種のジュエリーショップに吸収されたんだろう。吸収合併された経緯は何だったんだろう。
「高杉さん、どうして吸収合併されたんですか? よくわからないですけど、ジュエリーショップは業種が違うのに……と思って」
やっぱり聞かずにはいられなくなって尋ねてしまった。
高杉さんは、くすっと笑って振り向いた。すぐに前へと向き直ってしまったけれど、特に動じる様子もない。
「うん、ちょっと変かなあ……、ホントはね、合併する前は別の場所に店舗があったのよ」
「そうだったんですか? 合併してから移転したんですね」
「そう、名前も今の『シャイニー』に変わったの。実は私ね、移転前の店舗の時から勤めていたのよ」
「ええ? だったら、結構長いんですね、何年ですか?」
「ん……何年かなあ、十五年? 私も普通の事務職からの転職、たった一年だけどね」
恥じらいながら高杉さんが答える。
年数を聞いたら、さすがだと思う。私は十五年後どうなっているのか想像できないけれど、今は続けられる限り頑張ってみよう。

