「彼女、グループ会社の社長のお嬢さんなのよ」
高杉さんは私を連れて車に戻った。すべて花は搬入し終えて空っぽになったワンボックスカーの荷台を片付けながら、息を吐くように私に告げる。
「すみませんでした、知らなかったので、つい腹が立ってしまって……」
ここは平謝りするしかない。
最初から彼女が社長のお嬢さんだとわかっていたら反発しなかったのかと問われても、反発しなかったとは言い難いけれど。
と言うことは、彼女が山中さんの婚約者?
あんな態度と発言をするような女性が……と思うと嫌悪感がこみ上げてくる。
「うん、知らなかったものは仕方ないわ。後は岩倉君に任せて、私たちは帰りましょう」
「任せていいんですか? 私も謝りに行った方がいいですか?」
「いいのよ、彼にお任せしてたら問題無いわ」
と言って、高杉さんは車を走らせた。
岩倉君は自分の車で来ているから帰りの心配は要らない。だけど岩倉君だけに謝ってもらっても、本当にいいものなのか不安になる。
「グループ会社の主体はジュエリー部門だから私たちの立場は弱いのよ、私たちが傘下に入ったのは今の店がオープンする半年前。ジュエリー部門に吸収される形で、その時にグループ会社も設立されたの」
店のオープンは約一年前と仲岡さんから聞いていたけれど、グループ会社になった時期は初めて知った。

