「でも店長が配置を考えてくれたんです、バランスも考えてありますから勝手に変えられません」
腹立たしさを感じながら反論すると、女性の顔色がさらに険しくなっていく。
「これはジュエリー部門の展示会よ? あなたたちがメインじゃないの、ここでは私たちの指示に従ってもらえる?」
女性の強気で理不尽な発言に我慢できなくなってくる。私と同じ年頃なのに、どうして頭ごなしに言われなきゃいけないの?
もうダメ、いらいらしてきた。
「何でそんな……」
「大隈さん、あっちの花を頼むよ。ここは僕がするから」
言いかけた言葉を遮って、私と女性の間に割って入ってきたのは岩倉君。素早く私に他の場所へ行くように指示して、女性に頭を下げる。
「坂口さん、すみませんでした」
いつも無愛想でつんつんしている岩倉君が、簡単に謝るなんて信じられないし見たくなかった。
相手がお客さんならわかるけれど、お客さんじゃなくて同業者なのに。
どうして、岩倉君が謝らなきゃいけないの?
岩倉君の指差した方向を振り向くと、心配そうな顔をした高杉さんが手招きしている。いつまでも頭を下げている岩倉君を残して、私は高杉さんの元へ行った。

