「ありがとうございます、もうすぐ御結婚されるんですか?」
「はい、そろそろ……と考えているところなんです、」
「いいなあ、楽しみですね。お幸せに」
恥ずかしそうに笑顔で答える彼女は、本当に幸せそうで羨ましいほど。
彼女といい感じで話しながら花の体裁を整えていると、ひとりの女性が速足で歩み寄ってきた。
「この花を退けてもらえる?」
女性は足を止めるなり、きっと私を睨みつけて腰に手を当てた姿勢で言い放つ。私が飾ったばかりの花を指差して。
あまりにきつい口調で怒っているようだけど、心当たりなんてない。
さっきまでにこやかに話していた従業員は口を噤んで顔を伏せた上、一歩下がってしまっている。彼女の上司に当たる人かもしれないと思ったけれど、女性は制服を着ていないし名札さえ提げていない。
いったい何者?
複雑な気持ちで見つめていると、女性は苛立ったように大きく息を吐いた。
「聴こえてる? ここじゃなくて、あそこに置いて」
女性が指差したのは部屋の隅。この場所とは明らかに待遇が違うと思われるような場所に抵抗を覚える。花の配置はジュエリーの配置との調和を考えて、高杉さんが決めてくれたもの。
それを頭ごなしに全否定されるなんて、納得できないし簡単には許せない。

